勝ったと思ったのに・・・

 建築の世界でロンシャンと言えばコルビュジェ設計のロンシャンの教会(正確にはノートルダム・デュ・オー礼拝堂と言うのだそうだが)を想像するのだが、競馬の世界では凱旋門賞の行われるロンシャン競馬場の名前があがる。


 紛らわしいのだが、ロンシャンの教会は仏東部のスイスとの国境近くのロンシャンという町にあり、ロンシャン競馬場はパリ西方のブローニュの森に隣接した地にあって、凱旋門賞は歴史ある欧州競馬のなかでも最高峰のレースとして位置づけられている。30代の一時期週末には決まって淀の京都競馬場に通うほど競馬にのめりこんでいたものの、競馬がポピュラーになるにつれて、どういうわけか段々興味が薄れ、その後は全く関心がなくなってしまったのだが、今年の凱旋門賞には昨年の日本の三冠馬(さつき賞、ダービー、菊花賞全てに勝利)オルフェーブルが挑戦するということで少し気になるところがあった。


 オルフェーブルは前戦のフォア賞を圧勝し、有力馬が何頭か登録を取り消すこともあり、大外18番の枠順が災いして2番人気となったものの、前評判では本命視されていたのである。凱旋門賞における日本馬の戦績は、1969年のスピードシンボリ以来11頭が挑戦したものの、1993年のエルコンドルパサー、2010年のナカヤマフェスタの2着が最高で、日本競馬史上最強といわれたディープインパクトでさえ3着(後に失格処分)に留まってきたこともあり、オルフェーブル陣営としては、今年こそはという意気込みはさぞかし強かったはずである。


 さて、そのレース、後方待機から4コーナーをまわり直線に入ってスパートをかけたオルフェーブルが一気に先頭に躍り出て、後続を4、5馬身はなしたところで思わず「やった」と口走ったとき、残り100mほどで伸脚が若干衰えたところを外から伸びてきた一頭に並ばれ、ゴール前で差し切られてしまった。クビ差の2着、差し切ったのはソレミアという4歳の牝馬、しかも騎手は日本でもおなじみのペリエで二重にビックリ。後で記録をみると、この馬は12番人気ながらここ4戦全てロンシャン芝の重賞で、1着1回、2着2回、3着1回ということであり、また、過去の優勝馬に牝馬は結構多く、1979年から83年までは5年連続で牝馬が勝ち、昨年2011年の勝ち馬デインドリームも牝馬しかも3歳であった。


 それにしても、どうしてゴール前100mで伸脚がとまってしまったのだろう。オルフェーブルのムラッ気が出たのか、重馬場で予想以上にスタミナを使い果たしたのか、はたまた騎手スミオンの追い出しが早すぎたのか、詳細はわからないが、池江調教師の「日本のみなさんに申し訳ありませんでした」という試合後のコメントはこのレースにかけた心境がとても素直に伝わってきた。再度のチャレンジを応援したいものである。


 7日の日曜日はこの他にもスポーツの秋にふさわしく、各種大会がテンコ盛りの感があったのだが、男子ゴルフでは池田勇太が優勝、3週連続2位のあとはさすがに疲れが出たのか2週連続で確か20位台だったと思うのだが、再び盛り返して今度こそ勝利した。しかもこの勝利は通算10勝目で、あの尾崎将司を抜いて最年少の記録達成ということで、次週の日本オープンが楽しみである。テニスでは、錦織圭がジャパンオープンに勝ってツアー通算2勝目をあげたし、F1の日本グランプリでは、小林可夢偉が3位となり、日本人3人目の表彰台に立った。暗い話題が多い最近、久しぶりに明るいニュースで楽しませてもらった一日であった。


 それにしても勝ったと思ったのに・・・。

(2012/10/10)