危ない階段

 あるサイトの動画を見ていると「皆がこける謎の階段がニューヨークに」というタイトルが目に止まり思わずクリックしてみた。


 地下鉄から地上に出る階段を上がっている人々が次々とみんなつまずいてしまう。老いも若きも、手ぶらの人も荷物を持っている人も、そして子供を抱いている人も。一体何があったのだろうか、障害物があるようには見えない。


 解説によると、上から10段目あたりの段の高さ(建築用語でこれを「け上げ」という)が他よりも若干高いとのことである。エッ!たったそれだけのこと?そうそれだけのことで健康な大人が次々ところびそうになるのである。


 この動画を見てふと気付いたことがふたつある。ひとつは恥ずかしながら私の失敗談。ある飲食店舗の改装にあたって、道路と店舗のフロアー間に15cmほどの段差がどうしても生ずる。道路からエントランスまでの距離が近いためにここに段差を設けることは危険と判断して、店内に入ってから1mほどの距離のところに段差を設けたのだが、帰り際ここでつまずく人が続出、というほどではないのだが、とにかく日に数人、おっとっとっと、という感じでつんのめる人がいるという。なにせアルコールも入り多少千鳥足になっているということもあって、本当にコケたりしたら危ないということで、段鼻に白いラインを設け、スポットを当て、従業員ができるだけ声をかけていただくことで状況はかなり改善されひとまず安心と相成った次第である。ニューヨークの例のように、階段の途中でけ上げが変わるなどということは施工ミスの最たるものであるが、段差があると予想されないところ、あるいは気付きにくいところに段差は設けるべきではないという当たり前のことを改めて思い知らされた。


 そしてもうひとつ、一体アメリカではこんな状態のままでいつまでも放置しておくのだろうかということである。日本であれば、恐らくすぐに通行止めとして改修工事が始まるだろう。いや、そもそもこんな工事ミスは多分起こり得ないだろう。子供を抱いた人がつまずいているのを見ると、他国のことながら早く直せよと言いたくもなる。まあ、お国事情というのは大分違うものだというちょっとした文明論にもなるのだが。しかし、本当にケガする人は出ていないのだろうか。

(写真は京都豊国神社の石段、確か300段の余はある、これは危ない階段というよりも、疲れる階段である)

(2012/08/05)