玄関扉は外開き? その2


 大正から昭和の初期にかけてなんと250巻にもなろうという建築写真集、その名も「建築写真類聚」という本があるのだが、その中の「住宅間取図 巻二」は和洋折衷住宅(というよりもLDK部分が洋室タイプとなっているもの)の設計図を集めたもので、ここから玄関扉の開き勝手をみてみると、はじめの10案のうち8案が内開き、1案が外開き、1案が引き戸となっていて、以下ほぼこれに似た割合、つまりほとんどが内開きとなっている。


 次に、新住宅社が1983年に発行した「日本の住宅50年史」に掲載されている設計図から、1930年代から70年代までの各案を拾ってみると、30年代は23件中内開きが13件(56%)、外開きが3件(13%)、引き戸が7件(30%)、40年代は戦争の影響で掲載件数が4件のみということでこれは省き、50年代は18件中内開きが6件(33%)、外開きが7件(39%)、引き戸が5件(28%)、60年代は32件中内開きが10件(32%)、外開きが12件(38%)、引き戸が8件(25%)、70年代は34件中内開きが8件(24%)、外開きが22件(65%)、180度開きが4件(12%)となっている。


 つまり、戦前は和洋折衷住宅でも引き戸が1/3程度は採用されていて、開き戸の場合はほとんどが内開きであったのが、戦後はいったん内開き、外開き、引き戸の三者がほぼ同割合となり、その後次第に内開きと外開きの割合が逆転していった、そしてそれが顕著に現れるのが70年代であると言えそうである。なお、戦後引き戸は次第に姿を消し、180度開きの扉が登場してくるのも特徴的と言える。


 次に、現代は?ということで今手元にある「住宅特集7月号」に掲載されている図面を見ると、10件中内開きが0件(0%)、外開きが7件(70%)、180度開き及び引き戸が3件(30%)となっている。つまり、現在はほとんどが外開きというわけである。


 さて、それではどうして玄関扉は70年代に内開きから外開きに替わっていったのか?それは多分、核家族化が進み、都市郊外の比較的面積の小さい戸建て住宅が必要とされる、そして住宅プランの合理化が進む→玄関面積は小さくなる→外開きとなるということではないだろうか。もちろんこれは住宅雑誌に掲載されたものというくくりであるため、ハウスメーカーや建売住宅などを含めれば、この傾向はもっと顕著になってくるものと思われる。


 個人的には、合理的プランの追求過程において、気持ちよさとかマナーとかいった数値化されえないものが忘れられたことが大きく、そしてそれは、量より質的充実を目指す現代の社会にこそ必要とされるものではないかと思う次第である。

(2012/07/01)